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TCR礼賛(その1)そっくりすぎる外観2024年12月5日

我々が知っていること

2024年3月に第10世代TCRが発表されてから9か月余りの時が過ぎ、皆さんのなかには、各地で開催された試乗会や、ジャイアントストア等に設置された試乗車などで実際に乗られた方も多いかもしれません。
あるいはすでにご購入いただき、レースやイベント、サイクリングで楽しんでいる方もいらっしゃることでしょう。

歴代のTCRは、ツールドフランスをはじめ、世界の主要なレースで実戦投入され、世界のトップで戦える性能を証明してきました。

今回は、主に第8世代TCR ADVANCED SLを愛用し(愛用しすぎて2台持ち)、実業団レース、ヒルクライム、サイクリングなどに使用してきたスタッフ(福島)の視点から見た、新型TCRの魅力を掘り下げてみたいと思います。

もちろん、ジャイアントストアのBLOGですから、可能な限り正確な内容でお伝えしたいと思いますが、今回は、あえて自分の感じた主観や感覚といった、感性的な部分、つまりカタログや公式製品ページに載っていない部分を大切にお伝えしたいと思います。

・(その1)そっくりすぎる外観 ←今回のお話

・(その2)あまりにも変わったその性能

・(その3)SYSTEM OPTIMIZATIONの力

・(その4)リムブレーキ愛好家にこそ試してほしい

 

・そっくりすぎる外観

おそらくご存じの通り、第8世代、第9世代、第10世代と、TCRの外観はぱっと見ではほとんど変わっていません。
これは、2022年、劇的に変化した第3世代PROPELとは非常に対照的でした。
自転車に限らず、一般的な新製品開発においては性能的な向上を目指して技術革新を盛り込んでいくことはもちろんですが、マーケッティング視点からすると通常は外観から伝わる部分として、
・通底するシリーズコンセプトがキープされていることが伝わる外観的特徴
・性能の向上を外観からアピールする印象的な変化
が求められます。

たとえば第3世代PROPELの場合なら、
・力強く、ボリューム感のあるヘッドチューブ&ダウンチューブやケーブル完全内装などに見られる、空気抵抗を低減したエアロロードバイクらしい外観
・シートポストや、後三角など、自転車の後ろ半分を大幅にスリム化し、エアロ化と同時に大きく軽量化した先代から大きく印象が変わった外観
といった形で、二つの要求を満たしています。これは、ユーザーにも非常に伝わりやすく、大きな購入動機になりうる変化だったと思います。
つまり、一言でいえば、「すごく良くなったっぽいから買いたいな」と思わせるデザインだったということです。
 

左)第2世代プロペル
右)第3世代プロペル
ぱっと見で、エアロ形状ながらも大きく外観が変わったことが伝わる。

 

それに対して、今回の第10世代TCRは、第7世代から第8世代で外観が大きく変化して以来、ぱっと見ではほとんど外観が変化しておらず、ユーザーには外見からは進化がなかなか伝わりづらいように思います。
しかし、これを裏を返せば、すでに第8世代にしてTCRシリーズの形状は最適化が進んでおり、クライミングバイク、トータルレースバイクとして求められる性能が突き詰められているため、大きく変更する必要がない(下手にデザインをいじれない)ということであり、それでも新型モデルとして発表することができるほどに、開発担当さらにマーケティング担当までも納得させるレベルで新型モデルの性能は向上しているということでもあります。
「進化」ではなく、「深化」を選んだ、といえるかもしれません。




上)第10世代TCR
中)第9世代TCR
下)第8世代TCR
コクピットまわりのケーブル内装化などを除けば、シルエットではほとんど分からないほどにそっくりな外観。
しかし、実は着々と技術的なイノベーションは続いている。
これだけ徹底的に「熟成」を進めたことに拍手を送りたい。

では、変わらない外観の中で何が起きているのか、ということが、新型TCRを理解するうえで重要になってきます。

次回はそのあたりについて掘り下げていきたいと思います。