ジャイアントストア今治
【スタッフの製品インプレッション】遂にここまで来た CADEX Aero Cotton Tire2025年7月1日
こんにちは。今治店スタッフの川村です。CADEXより満を持して新登場のコットンケーシングタイヤ「CADEX Aero Cotton Tire」について、今回は製品インプレッションをお送りします。
製品の詳細につきましては、よろしければ以前にご紹介した記事もご覧いただけますと幸いです。
また、今回の製品インプレッションにつきましては、少し前に今治店のInstagramとFacebookにてご紹介したものに、情報をいくつか追加した内容となっております。
それではさっそく本編に参りましょう。
【使用するバイクとホイール】
この製品は、タイヤ幅28Cと30Cの2サイズを展開しております。わたしが普段乗っているリムブレーキTCRは、タイヤ幅は28mmまで使用することができます。そのため、今回は28Cを選択しました。
タイヤを組み付けるホイールセットは、GIANT のSLR 1(リムブレーキ仕様の最終版モデル)を使用します。なお、このホイールセットはフックレスリムを採用しておりまして、そのリム内幅は19mmという製品になります。
ホイールセットに組み付け後、空気圧を4barまで充填した状態でのタイヤ実測幅は26.6mmでした。
【組み付け時の作業性】
※作業のイメージ
このSLR 1 ホイールセットでは、これまでにほぼ全てのCADEXタイヤを使用してきました。そして、いずれの製品で作業を行う際も、タイヤが硬くてリムへの組み付けに難儀するという事はありませんでした。ところが今回のCADEX Aero Cotton は、明らかにビートが硬いと言える感触で、先の製品と比較しますと、組み付け作業に多少の労力を必要としました。これ、タイヤやチューブ交換作業が苦手な方がDIYで作業すると厳しいかも知れません。
わたしの場合、基本的に片手でもビートを組めるタイヤを「やわらかい」、両手を使わないと組めないタイヤを「ちょっと硬い」と判断しています。なお、ごく稀にタイヤレバーなどのタイヤ装着ツールを使う必要があるタイヤについては、「鬼硬い」と呼んでいます。一応補足を致しますと、このあたりはホイールセットとタイヤの相性によっても区々です。実際に今回のタイヤも、リム内幅22.4mmを採用するCADEXホイールに組み付ける際は、特段に硬いという感じはありませんでした。
そのためでしょうか、リムとビードのフィット感はバツグンによく、一般的なフロアポンプでもビード上げができそうな感触があります。
「CADEX 36とRace GC Tire」
これついては、他のCADEXタイヤを使用した際にフロアポンプでのビード上げ経験があります。
続きまして、チューブレスレディタイヤを運用するうえで気になるのが、タイヤに充填した空気の保持力についてです。デイリーユース勢にとってはこれ、すごく気になりますよね。で、結論から申し上げますと。CADEX Aero Cotton はタイヤ単体での空気の保持力について、多少の個体差ことあれど、ほとんど期待することはできません。そのため、タイヤシーラント充填による使用がマストとなります。これについては、初めてこの製品に触れた段階で予想していました。
「CADEX Aero Tire」
これまでのGIANTやCADEXからリリースされるチューブレスレディタイヤは、タイヤ内側のブチル層がとても分厚く、個体差こそありますが必要最低限のシーラントで運用することも可能でした。ちなみにわたしがプライベートで使用したタイヤのほとんどは、ほぼシーラント無しの状態でも問題なく運用することができておりました。※これはあくまでも自己責任での運用方法となります。
その作りの違いは写真で見比べても一目瞭然です。
◇ CADEX Race GC 表面
◇ CADEX Race GC 裏面
◇ CADEX Aero Cotton 表面
◇ CADEX Aero Cotton 裏面
CADEX Aero Cotton Tireは、しやなかなコットンケーシングの特徴を最大限に発揮するため、タイヤ全体が極めて薄く作られておりまして、空気の気密性を高める内側の層も最小限しか設けられていません。それはもう、ぺらっぺらです。
淡い期待を胸に、まずはシーラント無しでホイールに組み付けてみましたが、前後共に20分ほどで充填した空気が抜けてしまいました。そのため、シーラントをタイヤ片側10〜15ccほど充填して、タイヤの内側に空気保持のための膜をしっかりと設ける作業を繰り返し、装着から2日目でいつも通りの運用が可能となりました。
なお、今回のように空気漏れが早いチューブレスレディタイヤでは、シーラント充填後の作業方法にちょっとした「コツ」があります。ここ要チェックです。
※作業のイメージ
シーラントと空気をタイヤに充填後、ホイールをゆっくりと回転させながら左右に傾けます。トレッドからサイド、そしてビート付近まで、シーラントをゆっくり移動させるように意識することがポイントとなります。このときホイールの回転が速すぎますと、遠心力によってシーラントが偏ってしまうため、超がつくほどゆっくりと回転させながら、ホイールの傾き具合を変えるのがコツです。充填した空気の漏れが落ち着くまで、この作業を数回繰り返します。
ちなみに、コットンケーシングタイヤに対して使用するシーラントの種類についても所説ありますが、今回はひとまずスタンダードなラテックスシーラントを使用しております。
【走行インプレッション】
まずは空気圧について。体重54kgのわたしの場合、ライド中のシチュエーションから総合的にみますと、走行感の好みにもっともハマるセッティングは前後3.5〜3.8barとなりました。もう少し空気圧を上げた場合、路面を転がるタイヤから伝わってくる感触自体は軽くなりますが、クッション性によって得られるトラクションの良さは薄くなります。感覚としては4〜4.3barあたりが安定性を犠牲にしないギリギリのラインという印象でした。仮にこれ以上の空気圧で使用するとなりますと、しなやかなコットンケーシングはもちろんのこと、チューブレスタイヤである必要性も無いです。
「軽さ、半端ないって」
そんな空気圧セッティングがばっちりハマった状態での走行感を例えるなら、まるで魔法の絨毯もしくは筋斗雲といった感じです。どちらも乗った事ないですけどね。冗談はさておき、転がりの軽さ、トラクション、グリップと、走行性能については同じCADEXタイヤの中でも間違いなく群を抜いています。そのお値段もですけど…
タイヤ交換後に距離2.7km平均勾配8.3%のヒルクライムもリピートしてみましたが、交換前のタイヤと比較して登り1本あたりのタイムが30秒ほど短縮しました。このタイヤ。ピタッと路面に食いつく感触はあるものの、タイヤの転がり自体は非常に軽く、路面のギャップもしなやかに吸収することで、バイクがスゥーっと進みます。これこそ、優れた快適性によって生み出される速さです。
「CADEX Race GC」
ちなみにその交換前のタイヤというのは、CADEX Race GC Tireの28Cです。こちらの製品もグリップ力や乗り心地自体は優れていましたが、わたしの体格とバイクでは、タイヤの重量とグリップ力にパワーを喰われている感が強くて、個人的にあまり好みの乗り味ではありませんでした。これも別のバイクやホイールで使うと、タイヤの印象が全然変わるのですけどね。
このCADEX Aero Cotton の性能。ヒルクライムについてはもう少し距離が長く、平均勾配の緩いコースでしたら、タイヤによって得られるアドバンテージは更に大きくなりそうです。先月の富士ヒル、もしもベストコンディションだったなら使用してみたかった…というのが本音です。富士ヒルのような長距離且つ高速型ヒルクライムコースでしたら、条件によってはゴールタイムを少なくとも1分以上は短縮できるような感触があります。
雨で路面が濡れたワインディングでも、タイヤの接地感が非常に明確な点が素晴らしく感じました。速度が乗ったところからのブレーキングはもちろん、バイクを倒し込むことへの信頼感が、前後のタイヤからはっきりと伝わってきます。油圧式ディスクブレーキでも機械式のリムブレーキでも、ウェットコンディションを含むブレーキ性能は、結局のところタイヤの性能にも依存します。
その価格に相応しい、優れた走行性能を発揮してくれるCADEX Aero Cotton ですが、やはり弱点もあります。それは耐久性です。耐パンク性については既存のCADEXタイヤにも劣らないスペックを有していますが、レーシングタイヤ故のライフの短さは否めないでしょう。
例えばご覧のとおり、ほぼケーシングむき出しのようなタイヤサイド。この作りはトレッドからビートまでゴムとコンパウンドで覆われている通常のタイヤと比較して、抜群のしなやかさを発揮することができる反面、使用条件によって劣化が早く進行します。この製品は基本的に純レーシングタイヤに分類されるため、ごく一般的なタイヤにイメージされる耐久性(サイドのひび割れ、トレッドの耐摩耗性など)については、速さとトレードオフされている部分はあります。それでも、ここ1番のときにバッチリ決めてくれるタイヤなのは間違いないでしょう。タイヤの状態が美味しいうちにガンガン乗って、早めに交換するのが、こういったレーシングタイヤの基本です。
【まとめ】
今回はリムブレーキバイクでのインプレッションとなりましたが、おおよそ最新モデルのディスクロードであれば30Cを履くことも可能となるため、走行感の好みや目的、使用する機材との相性でタイヤ幅を選択することをお薦めします。
「これ、ロードレースなんだぜ」
例えば、今回のタイヤを含むCADEX製品の開発にも深く関わり、ロードレースでは他社製コットンケーシングタイヤを運用してきたTeam Jayco AlUlaも、今季はCADEX Aero Cotton を使用しています。コースの激しい高低差に加えて、路面コンディションも多種多様、それでいて平均速度が極めて速いロードレース界では、ワイドリムと30Cの組み合わせが現代のスタンダードになっているそうです。
ここで「へぇーー、だから?」って思ったあなた。
そういったロードレースの世界感や領域。率直に申し上げれば、わたしのようなホビーサイクリストにとって、通常ならほとんど触れる機会の無い領域です。また、純粋に競技を目的としてサイクリングを嗜む人の割合は、サイクリストの中でもおそらく一握りといったところです。ですが、レーサーでもホビーサイクリストでも、結局のところロードバイクに魅了される要素の大半は、その「スピード感」と「軽さ」にあると感じています。私自身、それが無ければロードバイクに乗っていませんもん。そして、そこに直結する性能を有するパーツの1つが、今回のようなタイヤだったりするわけです。
それを踏まえたうえで、個人的にCADEX Aero Cotton を試してみたい組み合わせがあります。それはDefyのような速いエンデュランスロードと、リム内幅22mm以上のワイドリムホイールを使用して、少しワイドな30Cを選択することです。その走りを想像するだけでワクワクします。その感覚こそ、カスタムパーツの沼ってやつです。
ということで、今回のインプレッション。長くなりましたが、少しでも皆様のお役に立てて頂けれますと幸いです。
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