ジャイアントストア今治
【ホイール】SLR1とSLR2 ハブの内部構造を比較してみました。2020年9月11日
新しくなったTCRの走りを支える新型ホイール。
ホイール各部の構造を一新することにより、
【重量】
【剛性】
【回転性能】
この3つの要素が大きく進化致しました。
早速、2021年モデルの商品展開をみてみましょう。
・平坦路も登りもこなせる42mmリム
・空力性能を追求した65mmリム
2種類のリムハイトに、
リムブレーキ仕様とディスクブレーキ仕様を展開しています。
加えまして、
それぞれにハブとスポークの仕様が異なるモデルを、
2グレード展開しています。
ところで。
「グレードと価格でそんなに違うの?」
これについてはホイールに限らず。
スポーツバイク全般に思った事はございませんか?
そこで!
42mmリムのディスクブレーキモデルを題材と致しまして、
SLR1とSLR2
それぞれのグレードによる差を探るべく、
ハブの構造を観察してみました。
SLR1については実際に乗ってみて感じた印象と、
同じハブ技術を採用するCADEXとの比較もご紹介します。
まずはこちら。
SLR 1 42 DISC HOOKLESS WHEELSYSTEM
¥160,000(税抜価格)
前後セット重量:1452g
昨年のSLR1 42 DISCに対して-128gの軽量化。
さらに、昨年の最上位モデルSLR0に対しても-26g軽量化。
昨年のSLR0が¥230,000だったことを考えますと、
この時点で驚きを隠しきれません。
フックレス構造となったカーボン製リムによるメリットは、
重量面だけでなく、タイヤの性能を最大限に発揮できる点にあります。
詳しくはコチラ。
そして。
リムと共に新しくなったもの。
今回詳しくご紹介をさせて頂く、
ホイールの心臓部とも呼べる、ハブ本体の構造です。
(試乗車のホイールの為、若干の使用感がございます)
まずは工具を使用して、スプロケット(とブレーキローター)を外します。
ここからの作業は専用工具が無くても分解可能です。
キャップを引き抜いた後、フリーボディーを外します。
最高級ブランドCADEXのホイールと、
同じラチェット構造を採用した新型SLR1ホイール。
フリーボディー側のラチェット部品はスプリングによって押し出され、
ハブ本体にはめ込まれたラチェットと接触します。
面と面で駆動力を伝達する為、非常に効率的なラチェット機構です。
このラチェットの表面には低摩擦コーティングが施されており、
アクスルシャフトに施された精密な切削加工と相まって、
非常に滑らかな回転を生み出します。
ここで。
当社歴代ホイールの中でも、
最高性能を誇るCADEXホイールと乗り比べた印象もご紹介。
尚、試乗したCADEXホイールはリムブレーキモデルです。
また、ホイールは乗る方やフレームとの相性で、
その印象も変わります。
①空転時の回転の滑らかさ
それほど性能の差は感じませんでした。
ただ、ホイール全体の剛性感に差がある影響でしょうか。
SLR1は、まるで路面を舐めるように、滑らかに。
CADEXは、まるで路面と空気を切り裂くように。
そういった印象を受けました。
②こぎ出しの軽さ
カーボン製スポークを採用する影響でしょうか、
CADEXはこぎ出しの反応が非常に軽く、
そのリズムを合わせるペダリングを意識しました。
それに対しまして。
当社独自のスポーク技術DBLの効果もありまして、
SLR1のこぎ出しも十分に軽いのですが、
あまりペダリングを意識せずに加速する印象を受けました。
②ホイール剛性の乗り心地
SLRホイールとは桁外れの剛性感を備えるCADEXホイールは、
ここ1番の速さが欲しい場面=レースに是非使ってみたいホイールでした。
このCADEXホイールを乗りこなせたら、
どんなコースでも自己ベストを更新できそうです。
ただ、普段のライドにも使用することを前提に申し上げますと、
必要十分な剛性感に適度な軽さを備えたSLR1の方が、
多くの方に好まれる印象を受けました。
CADEXホイールが30万円以上することを考えますと、
SLR1の16万円は価格設定を間違えたのでは?
とさえも感じてしまいます。
それほどまでに潜在能力の高いホイールです。
そこまで言われると、
気になりますのがセカンドグレードですよね。
SLR 2 42 DISC HOOKLESS WHEELSYSTEM
¥120,000(税抜価格)
前後セット重量:1545g
昨年までの最上位モデルSLR0の重量が1478gという事をふまえると、
セカンドグレードのSLR2も重量面では健闘しております。
もちろん、リムは上位グレードのSLR1と同じ、
カーボン製フックレスリムを採用しております。
さらに余談ではございますが。
SLR1とSLR2ともに、今回からニップルがリム外部に配置されています。
内部にニップルを配置した前作は、スポークの交換や振れ取りなど。
メンテナンス面では不便な部分が多かった点も事実です。
その為、これは非常にうれしい変更点でした。
それでは、ハブの構造を観察してみましょう。
SLR1と同じく、こちらもスプロケットとブレーキローター以外は、
工具の使用をせずに取り外し可能です。
SLR2のフリーハブ構造は、
従来の3爪式ラチェットを採用しています。
ハブ本体の波状の部分にフリーボディの爪が引っ掛かり、
スプロケットの回転をハブ本体へ伝達します。
爪はバネによって押し出される為、
空転する際はこの様に内側へ引っ込みます。
ホイールから聞こえる「ジイーーーー」という音は、
ここから発生しており、ホイールによってその音色が異なります。
昨年までのセカンドグレードと異なる点は、
ラチェットの爪が引っかかる数が増えている点です。
昨年までホイール1回転の内に、18か所だったラチェット数は、
新型では30か所に増えております。
(SLR1の面ラチェットも30か所です)
これにより、ペダルをこぎ始める際の掛かり始めが早くなり、
「加速が鋭くなった」と感じます。
もう一点。
こちらは少し残念な仕様変更になります。
今回、セカンドグレードのSLR2には、
当社独自のスポーク技術『DBL』が採用されておりません。
ご覧のとおり、ハブフランジも従来の形状を採用しております。
ホイールを駆動する際、
スポークで生じるパワーロスを軽減する技術が、
DBL(ダイナミック・バランスド・レーシング)です。
この技術を採用されたホイールに初めて乗った際は、
本当に驚きました。
そしてさらに!
上位モデルSLR1ディスクブレーキホイールは、
フロントホイールにもDBLを採用しています。
「え?なぜフロントホイールにも?」と、思われるかもしれませんが、
リムブレーキとは異なり、ディスクブレーキの制動時は、
ハブとスポークにとても大きな力が加わります。
ここにDBL技術を採用することで、
制動時もホイール剛性が低下せず、減速時の安定感が向上します。
これに対しまして、
DBLを採用していないことによる利点もございます。
それは、通常のスポークを流用することが可能な点です。
ホイールのスポークには、大きな力が加わっています。
どんなに丁寧にバイクを扱っていても、いづれは寿命を迎えます。
例えば、遠方へのサイクリングやツーリングの最中。
その道中で万が一、スポークにトラブルが発生した際。
(こんな場所でスポークが折れたらどうにもなりません)
長ささえ合えば、通常のスポークでも応急修理は可能です。
当店でも時々そういった修理を受付ておりますが、
もしも在庫のスポークの長さが合わない場合であっても、
通常のスポークでしたら専用工具で新たにネジを切り、
ホイールに合う長さのものを作ることが可能です。
ですが、DBLを採用するSLR1のスポークは、
その形状が独特な為、通常のスポークを流用できません。
その場合、純正部品を取り寄せ後に修理となります。
そうした点をふまえますと。
SLR2は汎用性の高いカーボンホイールと言えます。
回転の滑らかさや駆動効率等はSLR1に軍配が上がりますが、
何よりも!
カーボンリムホイールとは思えない価格が魅力的です!
如何でしょう。
ホイールのアップグレードは、
バイクカスタムの中でも費用対効果が非常に高く、
走る際のモチベーション向上にも繋がります。
まだホイールのカスタム経験が無い方には、ぜひともお勧め致します。
ジャイアント/リブストア今治