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【豆知識】よくある修理のお問合せと部品の名称~その2~2020年6月21日

よくある修理のお問合せと対処方法について、

それに関わる部品の名称と合わせてご紹介するこのシリーズ。

前回はタイヤまわりについてのお話でした。

第一弾→よくある修理のお問合せと部品の名称~その1~

第二弾は、変速ギアについてお話いたします。

まずはじめに。

「ギアが変わる時ってどんな仕組みになっているの?」という方へ。

写真とあわせてご紹介します。

仕組みを知ることは、故障やトラブルの原因を知ることに繋がりますよ。

 

当社を含めて、ほとんどのスポーツバイクに採用されているものが、

こちらの『外装式変速』と呼ばれるタイプの変速ギアです。

使い方のご案内をする際、「後ろのギアと前のギア」と呼んだりも致しますが、

車体の右側後方、後輪の中心付近にあるのが後ろのギア、

ペダルをこぐ足元のあたりにあるのが前のギアになります。

それでは、後のギアに使われている部品から順番にみてみましょう。

こちらの歯車が沢山ついた部品は『スプロケット』

そして、

この部品が変速機本体『リアディレイラー』と呼びます。

リアディレイラーとフレーム本体の間にある小さな部品を、

『交換式ディレイラーハンガー』と呼びます。

このディレイラーハンガーについては、後ほど詳しくご紹介します。

 

前のギアは『クランク』と呼ぶ部品に、

『チェーンリング』というギヤ板が組付けられています。

前のギアの変速機本体は『フロントディレイラー』と呼びます。

そして、足を乗せてこぐ部分が『ペダル』ですね。

ペダルをこぐ事でクランクとチェーンリングに掛かる『チェーン』が回転し、

リアスプロケットを介してホイールとタイヤに力を伝達します。

 

※一部のスポーツバイクには『内装式変速機』というタイプも採用されていますが、

こちらはリアホイールのハブ内部に、変速機構を備えたタイプになります。

シティーサイクルやママチャリによく見かける3段ギアも、同じく内装ギアです。

(現在、国内で展開する当社のバイクには内装式が採用されていません。)

 

手元の『シフトレバー』をカチカチと操作すると….

レバーとディレイラーに接続されている『インナーワイヤー』というケーブルが、

引っ張られたり、緩んだりします。

そうすることで、各ディレイラーが変速動作をします。

リアディレイラーの動きをもう少しだけ見やすくしてみました。

【いちばん重いギアのとき】

【いちばん軽いギアのとき】

チェーンの動きにも注目です。

まずは後ろのギア。

リアディレイラーのこの部分、上下に小さい歯車があります。

上は『ガイドプーリー』

下は『テンションプーリー』

大きいギアの方に変速操作する際の様子を観察します。

ガイドプーリーの上に乗っているチェーンが横方向へ動きます。

すると….

スプロケットの側面にチェーンが押し当てられて….

もとのギアからチェーンが浮き上がり、隣のギアへカチャン!と移動します。

お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、

外装式の変速機は、もとのギアから次のギアへ、意図的にチェーンを脱線させています。

ディレイラー(derailer)を和訳すると『脱線器』になるのも納得です。

後のギアが変わる様子を後方から見てみましょう。

【ペダルのこぎが軽いギアに変速するとき】

【ペダルのこぎが重いギアに変速するとき】

この動きをより効率化する為に、

実はスプロケットやチェーンリングにも工夫が施されています。

ギヤ歯の形もそれぞれで異なっていたり、

側面にはチェーンが引っ掛かりやすいように加工が施されています。

そのため、ギア1回転の中で変速(脱線)する場所が決まっています。

 

構造上その見た目は違いますが、前のギアを変速する際も原理は同じです。

大きいチェーンリングに変速する様子を見てみましょう。

シフトレバーを操作すると、フロントディレイラーが横に動いて….

チェーンをチェーンリングに押し当てます。

そうすると、この突起にチェーンが引っ掛かります。

そこから….

チェーンが持ち上がり…

どっこいしょ!

ここで、力一杯にペダルを踏みこみながら変速操作を行うと、

ギアがうまく切り替わらない、切り替わる瞬間に強い衝撃を生じる、などの不具合が出ます。

よりスムーズで素早く、静かに変速をする為のコツは、

・タイミングよくシフトレバーを操作すること。

・その際、ふみ込むよりもスムーズにペダルを回すイメージで。

この2つです。

前のギアを変速する際は、とくに意識してみましょう。

 

停止中でも変速が出来る内装式を採用するママチャリや、

オートマチック式ギアのスクーターやクルマに乗る方からすると、

この変速操作自体がとても新鮮に感じるかと思います。

上手に切替えられたときは「おぉ!」と、少し嬉しくなります。

そうです。

ここでもう一つ、肝心なことを忘れておりました!

ペダルをこいでいない状態でシフトレバーをカチカチと操作しても、

隣のギアにチェーンが移動しません。

スプロケット、チェーンリング、そしてチェーンが、

ペダルをこぐ方向、つまり正回転に動いていることではじめて機能します。

たとえば、停止した状態でシフトレバーをカチカチと操作すると、

ペダルをこぎ始めた際、チェーンに無理な力が加わりトラブルの原因になります。

置いてあるスポーツバイクをみると、ついカチカチと触りたくなりますが、

変速部品にとっても、あまり良くはありませんので気を付けて下さいね。

 

では、

「意識して変速操作をしているのに、ギアがうまく変わらない」

という場合には、どのような原因があるのでしょうか。

①ワイヤーのなじみ、消耗

ディレイラーには『インナーワイヤー』と『アウターワイヤー』が使われています。

新車の場合、乗り始めてしばらく時間が経つと、ワイヤーになじみが生じます。

各ギアに対するディレイラーの位置は、ワイヤーの張り具合で調整されています。

なじみが生じ、この張り具合がずれてしまうと、変速レバーの操作に対して、ディレイラーの動きにずれが生じます。

この症状は『初期伸び』というもので、故障ではございません。

納車からしばらく経過すると症状があらわれますので、お店で調整をご依頼下さい。

ワイヤー類も消耗部品の為、いつかは交換が必要です。

時間の経過とともに、錆やひび割れ、変速レバーの操作感が重いなどの症状が現れます。

余談ではございますが、

シマノDi2やスラムeTAPなどの電動式変速機には、この変速ワイヤーがありません。

変速レバー(というよりもボタンですね)を操作すると、

ディレイラー本体に搭載された小型モーターで変速動作を行います。

 

②チェーンやスプロケット、チェーンリングの消耗

これら3つの部品の中では、チェーンがもっとも早く消耗します。

スポーツバイクのように複数段の変速を行うチェーンは、

ペダルをこいで引っ張る方向以外にも、横へよじれる力が加わります。

さらに、変速動作の際は側面がギアにこすれています。

チェーンが消耗した際に『チェーンが伸びる』とも言いますが、伸びた分を切る訳ではありません。

切って長さを調節せず、新しいものに交換します。

消耗したチェーンは、ギア歯一つ一つに対して、コマ一つ一つの位置が合わなくなり、

引っ掛かり具合も浅くなります。

お店では、チェーンチェッカーという工具で確認します。

変速操作を行った際にチェーンが必要以上によれてしまうことで、

隣のギアへ移動する動作も鈍くなります。

スプロケットやチェーンリングも極端に摩耗が進むと、新しいチェーンとの相性が低下しますので、

チェーン交換を数回行った際は、それらの部品の消耗具合もチェックします。

 

③よごれ

高性能な部品でもあまりにも汚れが酷いと、その性能を発揮できません。

チェーンの汚れはもちろん、ディレイラーのガイドプーリーやスプロケットなど。

部品の表面に薄く黒い汚れがついている程度でしたら、まだ問題ありませんが、

あまりにも分厚い汚れの塊ができていると、調整をしても正確に動いてくれません。

上の写真の汚れは軽度ですが、あまりにも汚れが酷くて不具合が生じている場合。

リアディレイラーのガイドプーリーが、まるでお菓子のオレオの様になっている時も…。

 

しまなみ海道へサイクリングにお越しになる際、

変速機周りのトラブルでご相談を頂く中でも困ってしまう部品があります。

それが、『交換式ディレイラーハンガー』です。

ロードバイクからクロスバイク、MTBまで。

現在、ほとんどのスポーツバイクのフレームに使用されているこの部品。

交換式ディレイラーハンガーはフレームにネジ止めされており、

そこにリアディレイラーを組付けます。

車体が転倒した際など、リアディレイラーに外部から大きな力が加わると、

この部品がフレーム本体よりも先に変形、

さらに力が加わると、破断をするように設計されています。

少し曲がった程度であれば、変速に不具合を生じつつも走行はできますが…

こうなってしまうと走行はできません。

変速機本体に余程のダメージが無いようでしたら、

ディレイラーハンガーを交換することで修理も可能です。

ここで注意点がひとつ。

ディレイラーハンガーは、車種によって形状が異なる事が多い上、

他メーカーの車体と互換性がありません。

尚、当店ではGIANTとLivのバイクで使用するディレイラーハンガーについて、

なるべく多くの種類を取り揃えています。

他メーカーについてはお取り扱いがございませんが、

部品をお持ちであれば当店でも修理は可能です。

もしもの際に修理で立ち寄ったお店に在庫が無いことも多い部品ですので、

適合するディレイラーハンガーの携行をお勧めします。

 

日々の点検やメンテナンス、操作方法の習得などで、

変速ギア関係のトラブルも回避することが出来ます。

今回の内容に思い当たる部分がございましたら、

お役に立てて頂けると幸いです。

 

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